昨年10月に輸入された新ロットのシャンパーニュを試飲する会です。
最初の20分は勉強会の講義で試飲で取るべき順番が示されました。香りをかいだ瞬間の第一印象、味全体の色彩の第二印象、表現される世界観や心の感動、最後に香りと味わいの中心にある要素と構成は何か、をとっていきます。
この試飲でとった順番に沿い、テイスティングノートを書いておきます。
NV Penet Chardonnet Grand Cru Terroir Et Sens(プネ・シャルドネ グラン・クリュ・テロワール・エ・ソンス)
第一印象は明るさ、そのなかに平行四辺形の暗さがある。第二印象は黄色からオレンジの色合いが空間に埋めつけられていて、その色合いはグラデーションではなく混然一体となっている。
球体の空間が生まれ球体の外縁が薄いガラスのようにパーンっと張っている。この質感はミネラルに通じる。明るめの空間に中央に核がある。人の世界から天空を見たような立ち位置で、天は暗くないが明るくもない、夕焼けよりも朝焼けを彷彿させる。
香りと味わいの構成は、高低の高さで中央に基底となるミネラルが張り、空間全体には洋ナシが淡く埋め尽くしている。その中央には青りんご、それに明るいオレンジ、清見が柔らかく包み込んでいる。その柔らかな球状の少し内側に赤リンゴのちょうど皮があるように濃い要素がある。これら中央にある球状はググっと昇ってくる。ミネラルは透明さのあるブルーでゴツゴツした感じがあり、その周辺では白い花、ハーブのタイムなどスーッとしたシャープな香りもある。一方で、中央平面にある基底のミネラルより下面は、左右に暗さがあり、中央から下は底がない。
ふわんとしながら、カツーンっとミネラルが平面に広がる感覚が印象的で、 じっとみていると全体の構成や形が変わらずに、自分からは逃げていく方向の奥へとゆっくりと力強く動いていく。
NV Penet Chardonnet Grand Cru Terroir Escence Blanc de Blancs(プネ・シャルドネ グラン・クリュ・テロワール・エソンス ブラン・ド・ブラン)
第一印象は、ふわっとやさしく、すぐにぶわっと深い香りが立ち昇る。第二印象はエクレアの形に近い濃い黒い外殻が現れ、それが鼻腔に立ち昇る。
美しい白いラインのようにみえる平面が空間に現れ、その上方にはキラキラと小さな粒が瞬いている。平面より下からはナッツような香ばしさがあり、明るいが厚みの薄い雲が 平らにあり、一旦引いてみると全体は混とんとした空間になっている。
構成は高低の高さで上部3割のところに基底のミネラルが平面に張り、その平面から陽炎のように要素が昇っていく。全体は明るいがかなり奥まったところに赤リンゴが濃くあり、その周りはオレンジで包まれている。基底のミネラルより下側の7割には洋ナシがいる。鼻腔に抜ける香りにはゴボウの要素もある。
上記は2017年ベースの2022年11月デゴルジュマン。その後に抜栓された2015年ベースの2019年2月デゴルジュマンは、かなり印象が異なり、混とんとした空間でまとまりがあり、一体となっている。海のミネラルが深海のように海底の奥深くにあり、基底となる平面のミネラルからはパーッと力強く高く柱が立つ。蜜の味があり、きれいな光沢ある絹のシルバーをマントとしてまとい、その裏からはバナナも香る。
NV Penet Chardonnet Grand Cru Terroir Et Sens Rose(プネ・シャルドネ グラン・クリュ テロワール・エ・ソンス ロゼ)
第一印象は、奥へとググっと引き込まれる黒さのある魅力ある香りで、バニラの要素もある。第二印象は黄色やオレンジ、赤の油絵具のような濃い色彩。
全体的に暗い球体の空間でじわじわと収縮していく。 その収縮していく球体はブラックホールのように黒くゆっくりと引き込まれる感覚があり、その後にその球体はゆっくりと右カーブの円弧を描きながら奥へと動いていく。
高低の高さでは中央に基底となるミネラルはあり、このミネラルの平面より少し浮いた部分には濃い色合いが沢山と混じりあった要素がやや厚い層として平面を埋め尽くされている。 さらに上側は薄いオレンジで空間が埋まり、高さで9割の平面中央の位置には濃い絵の具の黄色い要素がぶらさがっている。
2009年 Penet Chardonnet Grand Cru "Les Fervins" Verzy(プネ・シャルドネ グラン・クリュ "レ・フェルヴァン" ヴェルジ)
第一印象は、おとなしい、冷涼、和、五香粉が香る。第二印象の味わいでは水平方向の一方でギューッと力強い動きがある。
菱形のようなものが空間の中央にあり、そこから放射状に全方位へ明るさがパーッと広がる。その広がりのなかで星の砂のような小さなキラキラとした粒が瞬く。その後に空間は融けていく。
構成は空間を超えている。感覚でもつ空間の1.5倍ぐらいの外側まで要素や存在が感じられ、基底は捉えられず、中央には中実な球体があり、全体を赤リンゴが濃い成分で埋め尽くしている。
2012年 Penet Chardonnet Lieu-Dit "Les Blanches Voies" Blanc de Blancs Verzy Grand Cru Extra Brut(プネ・シャルドネ リュー・ディー"レ・ブランシュ・ヴォワ" ブラン・ド・ブラン ヴェルジ・グラン クリュ エクストラ・ブリュット)
第一印象はきれい。レ点の尖った先端を感じさせる。第二印象は、立ち昇る陽炎で、和の印象で淡い。
空間は球体っぽいが中身も外側の縁も淡く、その側の縁は幾重にも球体の縁が重なっているようにみえる。しみじみと心に染み入る。水墨画ではない和の要素で空間が埋まる。
基底となるミネラルの平面は高低の高さで上側2割の高い部分にあり、その基底平面はさらに上方へと上昇していく。基底平面の下方になるが全体高さの中央には鰹節形状の赤リンゴが横向きにあり、外側からその鰹節形状に向かって尖った形で青リンゴが差し込む。
2010年 Penet Chardonnet Grand Cru "Les Epinettes" Verzy(プネ・シャルドネ グラン・クリュ "レ・ゼピネット" ヴェルジ)
第一印象は品がある。凛としたたたずまい。第二印象は落ち着きさ。
暗くはないが混沌としており、西陣織のように縦横で織り込まれたようで、縦糸が黄色、横糸が紅で、とても和らしい。風になびいている波打った糸状を感じさせる平面の端部にはキラキラとした粒が集合して正方形をしており、糸状の先端の動きに応じて上下しており、その集合体の9割は糸状より上側にいる。自然な流れで、しかしガツンとした矩形のアタックがあり、繊細さがあるかと思えば、奥でギューッと黒い核が伸びていく。
構成はミネラルの基底が高低で高さ上部2割ぐらいの高いところにあり、層は複層になっていて、鉄分が少しだけ混じる。かなり高いトーンで、その基底から上方へは明るさ、みかん、香木が立ち昇る。オレンジ、フルーツ、赤リンゴ、ベリーもある。
2011年 Penet Chardonnet Grand Cru "Les Epinettes" Verzy(プネ・シャルドネ グラン・クリュ "レ・ゼピネット" ヴェルジ)
第一印象は混とんとして暗い。第二印象はピカーンっと光り、そこからホップしながらギューッと立ち上がる。奥に鉄分、黄色の絵の具、赤リンゴもある。
西陣織の繊維がきめ細かく、繊細に織られている様のようで、その繊維は波となり、波が重なりながらたなびいて流れている。
構成は中央に赤リンゴがあり、それが高低の高さ8割へと小さくなりながらも高いトーンへと球体のまま移動する。その天空はシルバーを感じさせる。
2009年 Penet Chardonnet Grand Cru Cuvee Prestige Diane Claire(プネ・シャルドネ グラン・クリュ キュベ・プレステージ ディアン・クレール)
第一印象は、緑の香り。ウリ系や熟した要素がある。奥には黒い濃さがと透明さのある黄色もある。第二印象はミネラルの張り。
球体ではなく、皿の形で、皿の縁は波を打っており、その波は大きくゴツゴツとしている。
構成は高低の高さで9割の位置、つまり上部1割に基底となるミネラルが平面に張る。この面全体からパーンっと緊張感のある張り詰めた感覚が昇り、さらに上方へと高いトーンで鋭く立ち上る。さらに高低の高さ6割ぐらいの位置からやや骨太の鉱物のミネラルが穴の開いていないドーナツ状のまま全体的に上方へと広がる。
1本目は吹いたので2本目。こちらの方がきれいで凛としている。動物臭、味わいに色々な果実と動物が混じる一体となった味わい。一か所に要素が集中しており、それが力強く奥へと移動していくと、空間の奥深さを感じられる。
2011年 Penet Chardonnet Lieu-Dit Les Champs Saint Martin Verzenay Grand Cru(プネ・シャルドネ リュー・ディ レ・シャン サン・マルタン ヴェルズネイ・グラン・クリュ)
第一印象はクリーミーさ、もわんとした感じ、中世の古い時代の金装飾を想像させる。第二印象は喉奥で黒く力強く、でもおだやかで柔らかさもある。
空間は球体で、全天の中で中央奥に黒さはあるが明るく暗くない。ふわふわとした綿あめのような感じで、なんだろう、押してもいい弾力がある。
構成は高低の高さで7割の位置に基底のミネラルが平面にあり、高いトーンなのに黒く濃い。枠を超えた12割の位置から降り注ぐのではなくキューンっと金属音かのように手前に迫ってくる。紅玉の風味もある。
2019年 Domaine Jean Fournier Marsannay Clos du Roy (ジャン・フルニエ マルサネ ブラン クロ・デュ・ロワ)
第一印象はふんわり、もあんとした香りからもわもわと広がる柔らかく優しい香り。獣臭が薄くあり、鉄分のない脂の旨味を感じさせる香り。第二印象はベリー、色の濃い黄色。枯れた、浸漬した葉の風味。この風味が特徴で紅茶でポットに残った茶葉に近い。野の果実、小さい赤い果実の実、野草のベリーなどが風味としてある。
構成は高低の高さで8割にミネラルの基底があり、そこを中心として下方へと深みが出てくる。香りも味わいも全体として包み込まれている。
共通したのは、格が高いワインやシャンパーニュなので、要素を取りに行かなくても訴えてきてくれる点です。ただ、待っているだけでも色々と感じ取れますが、その中に入り込もうとすると、ふっと引き込まれたり、逆に離れてみたほうが全体を捉えやすくなったりして、絵画や音楽など芸術鑑賞と似た部分を感じます。
余興で持ち込んだメルシャンの新鶴シャルドネ2003年は熱劣化で香りも味も厳しいものでしたが、その奥底にはシャルドネのキラキラした瞬きと、熱劣化がない状態に大幅な補正をして考えると、この年代でも日本ではしっかりとしたワインを作っていたことが感じられました。
本日もおいしいワインと料理の数々ありがとうございました。ごちそうさまでした。