2011年12月10日土曜日

蝦夷鹿とワインとのマリアージュ @平野弥

蝦夷鹿が手に入ったということで開催された「蝦夷鹿とワインとのマリアージュ」と題した小規模なワイン会


天気がいいので中川駅から15分ぐらい歩いても気持ちがいい。看板の横道を入り田園風景を抜けていくと到着。この辺りは色々な種類の野鳥も飛んでいて、それを眺めながら歩くのも楽しい。


・Domaine Coche Dury Meursault 2008(ドメーヌ・コシュ・デュリ ムルソー)
黄色や赤の花の次に白い花がほわほわと2cmぐらいの束になって集まっている。これらの要素は交じり合っているため区別できない。口に含んだ瞬間から3cmぐらいの塊となった酸が口の中央に存在感をグンと現し、その酸は混沌としたエネルギーで刺々しさは全くない。そこからその塊が力強く後頭部の方向へグーっと伸びていく。豊かな味わいで、最近のモダンはムルソーを豊かにして継ぎ目のない状態にした雰囲気がある。いいワインは要素が複雑に交じり合ってもやもや混沌とした雰囲気を持ち、コシュ・デュリやドーヴネには必ず感じる。柔らかい控えめな柑橘系果実の甘味の周りに酸がやさしくコーティングしたような中核にコシュ・デュリらしさを感じる。


ココットはネギを焼いたものと塩茹でしたブロッコリー、ハムをちょっとと、チーズをかぶせてオーブンで焼いたもの。出汁など入ってないがネギの甘味とブロッコリーの塩茹でされた水分と塩分があっておいしく食べられる。素材そのままに近く、コシュ・デュリの存在感や要素の多さがあるのでいっしょに飲んでも融和する。



蝦夷鹿の2枚は同じ部位だが、薄めの方は歯応えは繊維がしっかりした肉々していて、味はベリー系ソースの甘味、食感や舌に感じる味はジビエの肉質だがレバーっぽさがあり、噛み締めるほどにレバーっぽい苦味を伴う旨味が出てくる。厚めの方は野性味があり、肉汁も出て、ジビエらしい味わい。噛み締めていくとレバーの風味が出てくる。


・Domaine Tollot-Beaut Corton-Bressandes Grand cru 2003(トロ・ボー コルトン・ブレッサンド)
果実がクッと来て、花と融合する華やかな香りで、少し血っぽさもある。口に含むと核のある果実味がふわっと広がり、クリーミーな香りが伴う。黒さや、スミレ、果実の甘味とその横にコクがいる。蝦夷鹿ともソースの甘味とトロ・ボーの2003年らしい甘味が融和して一体感が出る。


蝦夷鹿の第2弾。こちらは新しく獲れたもの。とてもやわらかくふんわりとして、コクがギュっとする味わい。歯応えの食感がよく、中央が柔らかい弾力を持ちながら沈んでいき、表面を歯が通ると繊維が簡単に切れ、噛むほどに旨味が出てくる。肉の旨味、甘味がじんわりとして、その後から野性味が加わってくる。噛んだときのキュッとし、トロっとした舌触りとなどがおいしい。


Mathilde et Yves Gangloff Cote-Rotie La Sereine Noire 2005(マティルド・エ・イヴ・ガングロフ コート・ロティ ラ・スレーヌ・ノアール)
濃いインクや濃い色の花の香りに動物臭が混じる。口に含むと力強さを感じるがすっきりした味で、茶色い印象を受ける。後半に酸味が果実味より先行してクィーンと高いトーンまで速く上昇していく。ブラインドで難しいシラーだが、このバルバリンはリリース直後は濃く、熟成するとピノ・ノワールのようになるというもの。ピノ・ノワールになったときにはラトリシエールに似るそうで、後半に感じた酸の立ち上がりに共通点を感じる。蝦夷鹿の臭みがなくすっきりして甘味があり、ガングロフも同じ雰囲気を持っているので合わせてもおいしい。


・Domaine Michel Niellon Chevalier-Montrachet Grand Cru 1997(ドメーヌ・ミッシェル・ニーロン シュヴァリエ・モンラッシェ)
黄金色。とてもいい香り。中核のある香りで、ショコラ、バニラ、ヨーグルト。口に含むと、やわらかく、コクもあり、混沌とした栗や椎茸も入る豊かな香りや風味が鼻を抜ける。時間が経つと甘いカラメルっぽい蜜、バニラ、果実の蜜、黒糖で作った綿菓子、黒蜜などのすごいいい香りが出てきていつまでの嗅いでいたくなる。飲み終えたグラスはとてもとても甘い香りになり、グラスの香りだけで幸せになる。これはすごい。


Yuji Ajiki 安食ロール
玉子感たっぷりの生地はふかふかで、噛まなくても舌で潰して溶け、生地の風味が活きる絶妙なバランスの甘味。滑らかな生クリームと中央のやはり卵感たっぷりの濃厚なカスタードクリームが生地と全体のバランスを取り満足できるロールケーキ。デザートとして準備したもので味覚が鋭いブルゴーニュワイン好きな皆においしいと評判でよかった。


Patrick Piuze Chablis Terroir de Chablis Vendanges 2010(パトリック・ピウズ シャブリ テロワール・ド・シャブリ)
梅、火打石、柑橘系のスキッとした果実、硬質なミネラルの澄んだ香り。塩もある。コルクはマールの香りがする。また、白い花、柑橘果実の甘皮の苦味、ラムネ、キーンとした香りもある。口に含むと澄んだスンッとした味。酸が一度ガクンと低く落ち込んだ後に元の高さに戻ってその後はスーっと流れていく。少し時間が経つとヒヤシンス、紫の香りやヨードや海っぽい香り。白と青をイメージさせる。果実や酸味とのバランスなどはジャン・フルニエのアリゴテに似たニュアンスがある。


本日のラインナップ。5人で6本。とても良質な蝦夷鹿、とてもいいワインをご馳走様でした。それぞれ高い品質で完成されているので補うようなマリアージュはないが、どれも融和して一体感のあるマリアージュだった。すごい贅沢なワイン会でした。