2015年7月25日土曜日

ワイン専門平野弥 ワイン教室 2015年7月(最終回)


第4回の今回が最終回となるワイン教室。従来のワイン教室にある醸造家などプロが行うテイスティングとは一線を画するアプローチとして絵画や音楽と同じような鑑賞方法を第3回までやってきた。第4回はその集大成と「本質に迫る」が命題になった。


今回の参加者は少なく4名。それでもワインは白4本、赤4本の8種類ある。


Comtes de Lorgeril Les Terrasses Chardonnay Vin de Pays D'Oc 2014
(コント・ド・ロルジュリル レ・テラス・シャルドネ  ヴァン・ド・ペイドック)
甘くぼわんとした丸みを帯びた雲のような密度の塊があり、その下側でパーンと明るく弾けるものがある。香りのトーンは高く、エッフェル塔の先端部分だけのような尖がり具合になっている。その尖がりの両端にまっすぐ上空へ向かう上昇気流がある。スワリングで中心からググーっと力強さとハッカを伴う柑橘があり、その奥から蜜の香りが出てくる。白桃、洋ナシ、レモン、グリーンノートもある。緩やかにファーっと包み込むような渦巻きがあり、渦巻きを一周すると入った側とは反対側へと駆け抜けていくような映像的な印象を受ける。口に含むと舌の上にやや重さをもった球体がぼわんっとあり、その球体は均一な密度でいる。果実の甘さから果皮の苦味がつながるように味わいが流れ、レモンの甘皮や甘皮の苦味を溶かしたような味わいがある。全体的にやわらかく、余韻に向かってそのやわらかい球体が収縮していく。少し時間が経つと、甘い水を溶かし和風の蜜や紅茶も少し香るようになった。よい意味でとても教科書的にしっかり作り込まれた印象を受ける。


Domaine Manciat-Poncet Mâcon Charnay 2011
(ドメーヌ マンシア・ポンセ マコン シャルネー)
ぼわんと丸いものが浮き、その中心からオレンジ、干した藁、藁が出てくる。吟醸香がトップノートにあり、奥にドングリ、果実を濃縮したような少しのエグミがある。香りからくる色彩の印象は少しくすんだトパーズ。小振りで小さなエクレア状の表面全体から上方に向かって香りがスースーっと立ち昇り、そのエクレア状の奥からは綿菓子が香る。香りの要素はマンゴー+綿菓子が特徴的。冷涼的でありながら奥には温かさがある。口に含むと甘味がふんわりときて、それが口の前面から上顎に向かって収れんしていき、集まった先は濃く黒さを持つ。舌には果皮の苦味が膜としてあり、飲んだ後の余韻でもジジジワーっと苦味が舌に残る。全体を通しては飲んだ瞬間からどうなるんだろうと味わいの流れがある途中で、刃物でブスっと刺されて物語が急に終わってしまった印象を受ける。


Cordier Père et Fils Macon Aux Bois d'Allier 2013
(コルディエ・ペール・エ・フィス マコン・オーボワ・ダリエ)
蒸かしているところでまだ硬さももった少しの栗、ゆったりとして、ミルキーさがあり、ぼんやりしている。それでいて生命力を感じる。スワリングで冷涼さ、グリーンの香り、中域にはエクレアを縦に2つ並べたような形で果実の塊がある。香りの要素はパイナップル+澄んだ綿菓子が特徴的。小さい白桃、それにミネラルがはっきり、でも奥ゆかしくもある。香りにきれいな流れがあり、よいハッカの成分が質を一段上に上げている。1つの完成した前菜のようである。味わいは舌の上にエネルギーが力強くあり、それがグーンっと口奥へとエネルギーの球状のまま進んでいく。旨味が強く、上顎奥へ向かって味わいが集中していく。果皮の苦味もある。温かさのある陽だまりを感じさせる味わい。とても豊かな日当たりのよい環境と活き活きと自由に生かされた感覚を受ける。


Domaine Jacques Carillon Puligny Montrachet 2011
(ジャック・カリヨン ピュリニー・モンラッシェ)
きれい、美しい香り。クリームをまとったやわらかさがあり、基底にあるミネラルからホップしてくるようにグリーンの香りが立ち昇ってくる。この立ち昇るラインがとてもキレイ。香りの要素はレギュームパテ(野菜)でゼラチンで寄せたもの。ヨード香、牡蠣、赤ピーマン、スパイス、可憐な白い花、白い花の少し後ろには鮮やかな黄色い花もある。それらの花を包むようにきれいな蜜がある。冷涼で、ステンレスぐらい硬質な香りの印象。口に含むと舌先から舌中央へと味わいが流れ、それと同時に舌中央で味わいが上昇する。その上昇する勢いは脳天を突き抜けるぐらいすごいが、上顎が天井となってガツンと突き当たりそこから雲のように滞留する。レモン、ライムの上澄みが要素としてあり、繊細にして複雑な味わい。上品で可憐な香りと味わいで愚直でまじめ、細かな気配りをする生産者を感じさせる。

Comtes de Lorgeril Vin de Pays D'Oc Sauvignon Blanc 2014
(コント・ド・ロルジュリル ヴァン・ド・ペイドック ソーヴィニヨン・ブラン)
ここまでのブドウ品種であるシャルドネの共通性を確認するため、番外編としてソーヴィニヨン・ブランを追加。
中域で落ち着きのある香りで、そこから横へと伸びていく。グリーン、ハッカ、スィーティ、やや湿気をもった下草が香る。冷涼で風を感じる。中域にグリーンのピーマンなど黒さも感じさせ、中高域にはスィーティなどあるが、やはりシャルドネのような突き抜けるトーンではない。口に含むと舌に重さがあり、ツーっと舌に沿って水平に喉奥へと進み、果実、特にオレンジの重さが感じられる。ライムの皮や果実の甘味が成分としてあり、シャルドネが自分で味わいが昇華していくのに対して、このソーヴィニヨンブランはミカンの網袋に果実の要素を入れて、持ち上げていく感じがある。上方の成分だけは自分で吸いあがっていく。やはりシャルドネとソーヴィニヨンブランで感覚や要素など大きく異なる。


Jean Fournier Bourgogne Rouge 2013
(ジャン・フルニエ ブルゴーニュ ルージュ)
キュートで冷涼さのある香り。海老や塩、甲殻類があり、黄色い花、紫色などが要素としてある。冷涼だがシャープではなく、何かをまとった柔らかい物腰、きれいな海の上澄みの香りもある。映像的なイメージでは小さく四角いエッジのあるソリッド状のものが思い浮かぶ。この形状はルーミエのときに思い浮かぶもので、ルーミエが透明感あるルビー色の寒天なのに対して、こちらは木綿豆腐ぐらいの印象。年齢で言うと10歳ぐらい。味わいも香りと同じくキュートで、舌全体から上顎に向かってキューンっと味わいがホップしながら立ち昇っていく。要素はクランベリー、フランボワーズなど酸味がある赤果実で、後半から余韻にかけては滑らかに、すっきりさを持ちながら10度ぐらいの傾斜をストレスなくスムーズに伸びていく。中心からパっと左右横方向へ味わいが弾けていくところも印象的。


Jean Fournier Bourgogne Rouge Les Chapitre VV 2013
(ジャン・フルニエ ブルゴーニュ ルージュ レ・シャピトル ヴィエイユ・ヴィーニュ)
濃くどっしりとした柔らかいが中核があり、その中核に存在感がある。やさしく和風の出汁のような香りの要素も感じる。落ち着きがあり、お淑やか、かつ、しなやかさもある。塩が多めで、甲殻類もある。香りの映像イメージは暗さの中に大地があり、そこにやわらかく混沌としたエネルギーが濃い黄色でいる。年齢で言うと17歳にも見えし、もっと30才代ぐらいにも見える。落ち着きのある20才代ぐらいかもしれない。味わいはやはり同じくぼわんとした球体で味わいがあり、その球体はキュートさを感じさせて上昇するかと思うと、元の位置に戻ってきた。その後はキュートさが落ち着きを持たせて味わいが球体へ集まってくる。エネルギーとして集まり、ベリー類の風味がそのエネルギーを横に貫いていく。ぼんやりと、ほわんとしたエネルギーとしてあり、輪郭ははっきりしている。他の方がコメントされた雲の上を歩いているかのようなふわふわ感も香りに感じられた。


前者のルージュは明るくハツラツとした印象で普通のランチや屋外でのピクニックなどで気兼ねなく飲むようなスタイル。後者のレ・シャピトルは同じACブルのクラスでありながら、暗黒の宇宙空間、世界観と意思や思いが感じられる。全くの別物。





ここから食事しながら、残りの2本も開ける。食事をしながらなのでコメントが減ります。


Jean Fournier Marsannay Rouge Cuvee Saint Urbain 2013
(ジャン・フルニエ マルサネ・ルージュ キュベ・サン・チュルバン)
冷涼で内向的。塩と甲殻類が要素として明確にあり、味わいはベジタブルな印象を受ける。


Jean Fournier Marsannay Rouge Cuvee Saint Urbain "Ptite Grumotte" 2013
(ジャン・フルニエ マルサネ・ルージュ キュベ・サン・チュルバン"プティ・グルモット")
カレースパイス、クミンなどが香り、とてもクリアな香り。味わいも透明感、そして内に秘めた感じがある。※クミンのスパイスがテーブルに出ていたのでそれを取ってしまったかもしれません。1週間前は和三盆の上澄みと香りを表現しています。


白と同じく、ピノ・ノワールとの違いを見るためにカベルネ・ソーヴィニヨン2本を追加

Comtes de Lorgeril Vin de Pays D'Oc Cabernet Sauvignon 2014
(コント・ド・ロルジュリル ヴァン・ド・ペイドック カベルネ・ソーヴィニヨン)
落ち着きのあるボルドースタイル。乳酸、中域の香り。グラスをボルドーグラスに変えるとココアの香りが出てくる。先週飲んだときにはボルドーグラスにするとココアの香りなどとても魅力的な香りは出るが味は薄くなってしまっていた。今回は味わいもしっかりして中抜けしていない。

Terrasses de Guilhem Cabernet Sauvignon 2013
(テラス・ド・ギレム カベルネ・ソーヴィニヨン)
牛乳、ドロドロした香り。味わいは変な渋さがある。熱劣化がひどい。


霧笛楼さんの横濱元町ハニーロール。食べたことがなかったので買ってみた。生地がもちっとした独特な食感で、「かまぼこ」という表現がぴたっとくる。クリームは中庸で、一番の売りとなっている元町で取れた蜂蜜はこのクリームにコクとして入っていて一体であるとも言えるし、表に出てないとも言える。


Moulin de GASSAC Muscat de Mireval
(ムーラン・ド・ガサック ミュスカ・ド・ミルヴァル)
かなり甘口で苦味のあるデザートワイン。ライチやオレンジの黒い部分のイメージがあり、糖質が舌に少しざらつく。酸味がなく苦味が強い点は厳しいが、この甘口の強さは高価なデザートワインに匹敵する。ポテンシャルはあるように感じる。


本日のラインナップ





本日も5人で12本と沢山飲ませていただきました。一般的な画一的で教科書のような”ワインを勉強”するという姿勢とは大きく異なるこの鑑賞方法は、自己の感性や感覚、価値観をきちんと持っていることは要求される。前者が社会科などの詰め込み型だとすると、後者は音楽や図画などの自由闊達な発想型や発見型だろうか。一般的な教科書だと、菩提樹の花があるとかないとかの探し当てゲームでステータスの勝者を決めるような感じになる。この鑑賞方法では音楽や絵画など芸術を鑑賞する方法であり、そのときに感じる感覚は他の人が感じるものと違っても、聞いたうえで再度鑑賞すると、その人の感覚に同調できる。品質がよいワインでないとできない芸当ではあるが、新しい楽しみ方として普及するとワイン飲みの世界が広がると思う。とてもおもしろい。

ワイン専門平野弥
横浜市都筑区荏田南町4212-1 045-915-6767 13:00-19:00 月火休