2016年5月3日火曜日

ワイン専門平野弥 ワイン教室 ワインの鑑賞学とは何か?


これまでの平野弥ワイン教室を1日で総括する教室が開催された。参加者は12名です。

第1部 10:00-12:00 ワインの鑑賞学とワインテイスティング
第2部 13:00-15:00 ワインの鑑賞学からみたワインの手ロワールについて
第3部 16:00-18:00 我々にとって価値あるワインとは何か?
第4部 感覚および完成を高めるための方法
第5部 論理的思考を身につける
第6部 ワインの道を究めるとはどのようなことか?


ワインテイスティングは立場や目的によって違うという本質に立っているところが、一般のワイン教室と根本的に異なる。一般のワイン教室は醸造学などの生産過程、ソムリエ試験に代表する流通、消費過程に必要なテイスティング技術を体系化したものがほとんどである。

生産過程(醸造家やオノローグ) 問題を見つけて処方する
流通過程(ワイン商、インポータやワインショップ) どれだけ値上がりするか
消費過程(ソムリエ) 提供に問題ないか、適切な提案や提供
消費(ワイン愛好家) 未確立。このワイン教室の主題

ワイン愛好家本来のテイスティング方法は未確立であり、本来あるべき姿を探求することがこのワイン教室の主題となる。もちろん、分析する楽しみ方もあるので一般のテイスティング方法を否定するものではない。



第1部 ワインの鑑賞学とワインテイスティング

作法1 ワインに適したグラスを選ぶ。香りの立て方、グラスの回し方。
国際規格テイスティンググラス(ISO3591)を使うことで、どこでもワイングラスによる差を排除することができる。これに対して地域や品種に適したグラスがあるときにはそれを基準に使いましょうというスタンス。

作法2 香りの楽しみ方。
香りを全体の調和から捉え、ひとつの流れとして感じること。香りの世界に精神が入ること。縦に上がる、横に広がる、球体など香りの形(匂いたち)を捉える。トップ・ミドル・ベースなど立体感、香りを色調のグラデーションで表現するなど香りのトーン(調子)を捉える。視覚的・映像的なイメージを表現する。

作法3 香りを楽しむ延長で液体を口の中に流し込む。
風味を川の流れとして捉える。川には深さや幅、速さなどがある。また風味を一つの器として捉える。中心にある果実の質と広がり、酸味との絡み合い、酸味の質、渋み、旨みの出方と質をみる。味覚の基底に流れるミネラル(感)を捉える。

作法4 風味全体を一つの作品としてみて表現する。音楽や絵画の作品になぞらえて。
作法5 お料理とのマリアージュを考える。
作法6 心に訴えてくる精神性や楽しさなど、作法5までとは別のもう一つの世界を感じる。

第2部 ワインの鑑賞学におけるテロワールや醸造技術

ここでの記載を省略。


これらを踏まえて試飲を開始




Nicolas Rouget Bourgogne Aligote 2013

春や新葉、新緑やタラの芽など明るく若いグリーンを彷彿させ、中域から高域まで伸びていき、すそ野は幅を持つがその上部にいくと俯角20度ぐらいで先端まできれいに収束していく。奥からは蜜、中心に少し黒さや暗さのある軸があり、その軸はほうきを逆さまにしたように上方で放射状に短いが枝葉が伸びる。味わいは温かい平面でキラキラと光るとても薄い浅瀬。硬水でありながら流れがないので川っぽくはなく、池でも水たまりでもない。とろみがあり、鼻には蜜の風味が抜ける。その場に立っているがそこがどこかわからない。




Jayer-Gilles Bourgogne Aligote 2012

甘い蜜の世界。雲のようにもわもわしている。スワリングでシャープさと鋭さ、冷涼さが出る。柑橘類の甘皮の苦さが平面に広がりある一定の幅を持つ香り。アカシアの蜜、ハッカ、グレープフルーツの甘皮、和三盆、オレンジ、スイーティなどの要素があり、後半に香水のような香りが出てくる。中心には丸い核があり、冷涼でも明るい陽射しあり、熱くはないので直射日光ではなく間接的な日の光を受けている印象。口に含むと厚みを持った層が平面にぶわーっと広がり、その平面一帯から上方へと朝もやのように柑橘酸味の高いトーンが湧き上がる。その後、強めに甘皮の苦みがググッと力強く出てくる。シャープさから薄い色合いのガラス絵越しにグリーンの風景や陽で照らされた木や葉が黄色や若い緑が見える。その木や葉には動きがあり、じっと見ているとガラスを飛び越えて葉に近づく。

同じアリゴテでもこれだけ違う。もし、品種で画一的に当てはめて要素を探しにいくと極一部の特徴だけクローズアップされてしまうので、この風景や世界観を捉えられないと思う。
平野さんはニコラ・ルジェをプリントした絵、ジャイエ・ジルを油絵と表現されてました。



パン2種類。四角い方はレストランさんからの持ち込み。オリーブが効いている。




Domaine Ramonet Bouzeron 2013

暗がり、焼けた香り、かなり浅瀬で、トロッとした香り第一印象。香りが凝縮して均一な密度を保つ球体としてあり、球体から周囲へは同心円状にグラデーションで広がりを持つ。スワリングでこの球体は横へと楕円状に広がり、かつ小さい幅から俯角2度ぐらいできれいに収束していく様が凛として美しい。味わいの第一印象は丸みのある旨みとの一体感、香りと同じく均一な密度がすごい。戻り香は強い要素が出てくことが多いのに対して、これは高いトーンからミドルまでが美しくつながっている。飲み込むと口の下を中心に丸くとろりとした饅頭ぐらいの核があり、そこから味わいが放射状に広がる。

追加されたこちらもアリゴテ。3種類のいずれも風景や立体感を感じられておもしろい比較になった。


第2部 ワインの鑑賞学におけるテロワールや醸造技術 に相当する試飲

泥灰土と石灰質土壌の比較です。



Domaine Fontaine-Gagnard Chassagne-Montrachet 1er Cru Les Caillerets 2013

石灰のミネラルが厚みを持ってあり、その層の奥中央にはオレンジやオレンジピールの核が下凸円錐状で濃く、しっかりとある。バンバンと途切れなく出てくる香りは品があり、温かい。高いトーンの柑橘、明るいオレンジ、スイーティがレースのカーテンのように周囲から中心へと寄っていき、それに伴って中央の軸は高く昇っていく。その高みの頂点は鋭くはなくある幅を持っている。凛としているが大人しい。口に含むと薄い層のミネラルがパーンっと横に張り、それをぶわんと立体的に膨らんだやや横に膨らんだ球体が包み込む。その球体の上方からはふぁーっと高いトーンの成分が昇華していく。後味の栗の風味がとても心地よい。和の甘味もある。鋭いが柔らかさがあり、とろみある。川は少し冷たいが川には日が照っている。
食事に使いやすい味わいで、一言で表現するとダイナミックな動きが特徴なので「躍動感」。




Domaine Fontaine-Gagnard Chassagne-Montrachet 1er Cru La Romanee 2013

海藻、ヨードを含むミネラルが平面に薄く張り、その平面のまま浮き上がってくる。ミネラル層の中央奥には下凸円錐状の柑橘ピールや甘皮の黒さがある。温かさに暗さが交じる。香りはきれいに収束しており俯角5度ぐらい、その中心が先導して周囲を引き上げている。周囲を引き上げていると言っても薄いベールの中央をつまんで持ち上げるような重さや労力ではなく、中心の先端からさらに上方へと次々と生み出されている感じ。香りの要素はバラの香りが上品で美しい。味わいは丸く一体で膨らみ、60cmぐらいの球体になる。旨みがとても強いが押し寄せてくるのではなく包み込まれる感じで温かい。中心から柑橘の高いトーンの酸味が広がるかと思うと、丸さと甘さで全体を制覇する。奥には大きな核があり、追うと奥へと逃げていく。インパクトがありわかりやすい一方で、重さもあり柔らかく丸さもあり複雑で難しい面も見える。
1本をバラの香りや味わいの変化などゆっくりと楽しみたいワインで、一言で表現すると「どっしり」。

両者は香りにミネラル層の中央奥に下凸円錐がみえた点が共通していた。香りと味わいともに形や動きは大きく異なり、好みがわかれるところ。どちらか1本と言われれば、ラ・ロマネの美しいバラ香には惹かれるが、味わいの躍動感が勝りカイユレ。参加者では半々ぐらいで好みが分かれました。


ここでお昼です。


野菜とワインのお店 maaru(マール)さんのランチセット


有機野菜や雑穀米など健康的な食材。野菜をたくさん摂れます。





Domaine du Pelican Arbois 2014

落着きのあるもちっとした香りで、丸くした求肥を5cmぐらいの高さから落としたような形のぽってりさ。グリーンが主体でいろいろな柑橘果実の実や甘皮、外皮をごちゃ混ぜにした香り。香りにシャープな冷涼さはあるが鋭くはない。トップノートによどみや栗などが交じる。ウリも要素にあり、クリーンな香りではなく曇りがあり、オイルっぽさや温度が高めの湿気、バタークリームのような雰囲気もある。味わいもぽってりしていて、舌にはあっさり、周囲によどんだ風味、酸が少しだけピリピリとして、要素はあるが一体感がないので、どこを見たらよいか迷ってしまう。

お茶でいうと粉末茶や粉茶、抹茶の粉を入れてかき混ぜたがうまく交じっていない感じ。
非石灰質として泥灰土がわかりやすいと追加されたJURA。




Domaine Jean Fournier Bourgogne 2013

赤果実の甘い香り、ミルクも入った苺のいい香り。ミネラルが平面に張るが、中央が隆起している。薄いが明るい印象を受ける香り。紫を薄めたような色合いも感じる。味わいはミネラルは平面状にあるが張らずに少しの厚みを持ちほんわりとしている。ミネラル弱く、薄めの味わいだがすっきりして素直。
素直でおいしい。かわいい印象を受ける。





Domaine Jean Fournier  Chapitre Vieilles Vignes 2013

濃く奥行きがあり、深く、引き込まれる黒さを伴う香り。ミネラルに力強さと訴えてくる感じがある。波動を感じる。それでも明るく夏の終わりのイメージ。黄色や赤がトルネードのようにらせん状になりながら進んでいく。梅の澄んだ香りがあり、土の香りも少し上にのっている。プレパラートと一緒に使うカバーガラスのようにとても薄い層が幾重にも重なっている香り。味わいは、水源で湧き出た水のように「ぽにょぽにょ」とした後、上凸で緩くミネラルが張る。濃く、詰込みながら輝きも保つ味わい。カチッとした透明の輪郭が正方形であり、その上にさらに稜線が半分の大きさの正方形の輪郭がのる。ある。梅の風味がある。

シャピトルの方が深さや要素の種類は多く、香りと味わいともに立体像がおもしろい。ACがやわらかく包み込む、またはその場にそのままいる、というタイプで、シャピトルは精神を打ち込んだ鬼気迫るところも垣間見れる芸術肌タイプ。個人的には普段はACでほっこりして、たまにシャピトルで感性を掻き立てるぐらいがよいので好みではAC。同じことがシャンパーニュでも感じていて、ACのタイプに相当するのはアンドレ・ロベールで、シャピトルに相当するのがプネ・シャルドネです。




Monthelie Douhairet Porcheret Monthelie Cuvee Miss Armande 2013

むわんとした香り。セメダインが前面にあり、それをかき分けて奥をみると暗い香りや古めの木箱がある。よく見るとさざ波のように荒れながら香りが寄せてくる。茶色に黒さが加わった色合いで、青臭い香りやスーッとする香りが多くある。口に含むと下にまとわりつき、ベタッと舌の上にのる。しわしわと渋みが口いっぱいに残る。飲んだ瞬間に口の前辺りで味わいがパタッと止まる。明るい3cmぐらいの小さい水たまりから高いトーンの赤果実が昇っていく。

除梗しないグラッパンチエールの説明に出された1本。




Jean Baptiste Ponsot Rully 1er Cru Molesme 2013

黒く濃い香りや焦げた香り。赤や黄色の濃い花が最初にあり、後で柔らかい花の香りになるが黒い。すそ野がどっしりとした麓からエッフェル塔ぐらいの角度でクーッと香りが昇っていき、その頂上付近は少し幅を持つ。グレープフルーツの官能的な香り、塩に加えて、ミネラルが矩形にガツンとある。少しレアな肉の香りのニュアンスがあり、表面にパリッとした薄い層が緩い凸状にある。味わいは柔らかい。梅シソ、出汁の風味。味わいにも香りと同じく薄い層が緩い凸状で表面にあり、その凸の内部は旨みがジュワーっとしている。味わいの階層は香りと同じくエッフェル塔で、その頂点に昇った味わいは風になびくかのように横へと広がっていく。温かさを持つ香りだが、「あたたかい」ではなく、肉のレアぐらいの温調上の温かさ。時間と共に香り、味わいともにダイナミックに変化する。

香りと味わいともに表面に薄い層がパリっとあり、味わいで中にジュワーっとした旨みがある点は、横浜中華街の金陵「アヒル」を想像させる。色々な要素が出てくるが好みではない。



第3部 我々にとって価値あるワインとは何か?

有名な評論家などが現地で試飲しているものと一般流通しているワインは同じではないので、それを知らずに評価やテイスティングコメントを参考にしていも意味がないという話。




Claude Dugat Gevrey Chambertin 2008

グラスに注がれると苺が周囲に漂う。グラスから取る香りは、黒い、湿った藁、醤油、ジメジメとくすぶっている。塩も甲殻類もなく、焼いた果実やショコラが要素としてある。口に含むと苺が舌にのり、しわしわと舌いっぱいに渋さが舌を支配する。舌にのらずに唇や舌の横や隙間に渋さが迫ってくる。(某所から入手のワイン)




Claude Dugat Gevrey Chambertin 2011

大人しい。塩、少しの甲殻類が香る。陰性で、冷涼な風がゆったりと吹いている。香りの要素が甘く、花の香りが凝縮して、それにグレープフルーツなどの柑橘がのる。バランスが取れた一体感がある。味わいは赤果実とも黒果実とも区別がつかない甘味があり、干しブドウの風味もある。


同じヴィンテージで比較できてないが、そういうレベルではない。要素を探し出すテイスティング方法であれば、もしかすると前者のワインでも変わった要素があっておもしろいのかもしれないが、消費者としては単純においしくなくて飲みたくない。残念です。



チーズと合わせると、ワインが甘くなりチーズと一体になる。


サーモンのマリネ



Andre Robert Seduction 2007

リンゴの風味、クリーミーさ、焼きリンゴ、リンゴの皮を剥いた皮の香り、ウリなどさまざまなリンゴが香る。中心に軸があり、押し寄せる力強い波はない。味わいは旨みが豊富で、中核から口奥上側の方向へと味わいの波が伝搬していく。舌にはシュワシュワと炭酸が長く刺激し、鼻孔にはふわんと熟したリンゴの風味が出てくる。




Jean Fournier Marsannay Trois Terres VV 2013

熟した苺、コンポートした苺。黒い軸がまっすぐに立ち、ゴボウも芯にいる。コールタールのような香りの雰囲気、香水の香りもある。透明感あるが濃く輝き、でも硬い。味わいは黒っぽい果実、今は凝縮し過ぎな感じ。澄んだ味わいでも濃くしっかりして、硬さもある。塩に少しの乾燥した甲殻類をパラパラと振りかけた風味もある。


本日もありがとうございました。勉強会ではいろいろな意見や議論もあり、新しい発見や表現もあるので楽しいです。参加者12名で番外編を入れて14本なので勉強に適度な量でした。

希望者だけご飯を食べに移動します。


ワイン専門平野弥
横浜市都筑区荏田南町4212-1 045-915-6767 13:00-19:00 月火休